羅臼岳

ぬれネズミでたどり着いた登山者本位の宿

 羅臼岳登山の日は天気は下り坂。コースは岩尾別温泉登山口からのピストンです。
 どんよりとした天気の中を登っていくと、早くも弥三吉(やさきち)水あたりから雨具を着ることになりました。すれ違った人から「羅臼平の下でヒグマを見ました。気をつけてください」と聞き、腰ベルトに熊スプレーを下げ緊張しながら進みました。

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 羅臼平には、フードロッカーと呼ばれる、鋼鉄製でヒグマが開けることのできない箱があり、幕営する人は持参した食料全部をここに入れるよう注意書きがありました。ヒグマの棲む北海道でも、これがあるのは羅臼岳くらいで、他の山にはまだ普及していないようです。
 人間の食糧の味を覚えた熊は人を恐れなくなり、危険な個体と化します。フードロッカーの普及が待たれます。

 そこから先、雨は暴風雨に近くなり、羅臼岳の山頂では、反対側が切り立った崖になっていて、そちら側に吹き飛ばされそうな勢いの風でした。海に突き出た知床半島の山ですから、風雨の強い日が多く要注意です。
 早々に山頂を辞し、わき目もふらずに下山し、登山口に着く頃にはすっかり「ぬれネズミ」状態でした。

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 下山後は、斜里岳登山に備えて清里町駅前の宿「北の家」に向かいました。宿に入って、雨天登山の後泊まるのにこれほど有難い部屋はないと感激したのです。
 部屋には突っ張り棒やロープで、濡れた衣類がいくらでも掛けられるようになっていました。
 このような登山者本位の宿には、いまだかって巡りあったことがありませんでした。

rausu houmen
海も荒模様

 宿は、昼間食堂として営業しており、夕食も土間から上がったところのちゃぶだいでいただきました。ビールの後、「他にお酒は何がありますか」と尋ねると、「うちはこれしか置いていない」と言って出してくれたのが、じゃがいも焼酎でした。サツマイモを原料とする芋焼酎はよく飲みますが、じゃがいも焼酎の存在は知りませんでした。このあたりはジャガイモの生産量が多い地域でした。

 翌日も大雨で、斜里岳登山は次の日に延期しました。この宿に連泊をお願いし、昼間はお土産の購入等に時間を当てました。
 濡れた衣類はすっきり乾き、リセットして次の斜里岳登山に臨むことができました。

(2019年7月登頂、日本百名山91座目)

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