幌尻岳 計画と準備のポイント

単独行を絶対避ける

 幌尻岳は日本百名山の中で最も登頂の難しい山だと思います。
 他の99座は、尾根歩き経験をベースに、岩場での三点支持スキルを会得し高度順応力を増せば、適切なコース選択により対応できるとしても、幌尻岳に平取町側から入る場合、渡渉技術と引き返す勇気が追加で求められます。

 廃校となった豊糠小学校の校舎を改装して登山拠点とした「とよぬか山荘」。ここの掲示板には、行方不明者の写真と家族からの情報提供依頼が何枚も貼られています。多くは単独行の方で、額平川の渡渉中に流されたらしく、消息が不明となっている方々です。単独行の場合、遭難しても気づかれにくいので迷宮入りになりかねません。

 まずはパーティーを組んで登る。その目途がなければ登山ツアーに参加する。それも難しければ、現地ガイドをつけるのが良いと思います。
 一度大水が出ると川底の様子は一変するので、毎週のように往来している現地ガイドをつけるのが一番安心です。

計画は早めに

 幌尻山荘の予約が取りにくい傾向にあり、これがボトルネックになる可能性があります。予約受付開始日を調べておき、早期に計画を立てるようお勧めします。

渡渉用の靴を用意し試し履きを済ませておく

 川底は普通の登山靴では滑りやすいので、靴底にフェルトを貼ってある渡渉用の靴がお薦めです。本番でいきなり履くのではなく、沢歩きの基礎を実地講習等で経験しておくとよいと思います。川底を探るためにストックは有効です。

脚部の冷え防止用装備を用意する

 額平川の渡渉を無事終えても、その上部で足がつって歩けなくなり断念するケースも発生しています。渡渉で脚の筋肉が冷えたことが原因の一つと考えられます。渡渉中は、ウェットスーツの素材で作られたスパッツと靴下を着用して、少しでも脚の冷えを軽減するようお奨めします。

引き返す勇気を持つ

幌尻北カール
幌尻北カール

 広大な幌尻北カールの水がすべて額平川に集まるので、雨が降るとあっという間に水嵩が増します。麓で降っていなくても上部での降水で急に増水するケースもあります。
 ザイルを使っていたのに命を落とした例もあります。川で流されはしなかったものの、水が上から覆いかぶさってきて呼吸ができず溺死したものです。
 増水したら、引き返す勇気が何よりも重要です。

新冠田中陽希ルートの存在

 長い林道走行(約40km)と林道歩き(約20km)をいとわない方には、このルートにより、増水による足止めリスクと渡渉リスクを軽減することができます。ただし、林道の崩落による通行止めリスクはあります。
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