雨飾山
束の間の都忘れ
入山前夜小谷温泉に泊まり、雨飾山登頂後は梶山新湯の「都忘れの湯」という粋な名前の温泉に浸かりました。週明けに仕事の現実に戻るまで束の間ですが、都会暮らしを忘れさせてくれました。
日本百名山を巡る中で、私にとり50座目の、折り返し点となった山です。
登山前日は、新宿駅で中央本線の特急スーパーあずさに乗車し、快適な列車旅をしました。甲府盆地を過ぎると車窓左側に南アルプス、小淵沢を過ぎると右側に八ヶ岳の眺めと、マイカーとは比べるのも愚かなくらい、列車旅は楽しいものです。
南小谷駅で下車して小谷村営バスに乗り換え、小谷温泉に向かいました。夕食の酒肴に舌鼓をうち、翌日の登山に備えて早めに休みました。
入山初日、小谷温泉から登り始めてまもなく、木道が水没している箇所があり、往生しましたが、何とか登山靴の中に浸水することなく通過しました。ここだけは長靴があったらと思いました。
体が暖まったところで、宿にお願いしてあった朝食おにぎり弁当で腹ごしらえをしました。力をつけるようにとの計らいか分かりませんが、固めに握られていて米粒ぎっしりのおにぎりでした。
個人的好みとしては、「おにぎり」よりも「おむすび」の方が、お米とお米を結びあわせるという意味あいもあり好みです。
しかし、山中では好み等贅沢を言っている場合ではありません。
家にあれば 笥(け)に盛る飯を 草枕 旅にしあれば 椎の葉に盛る
という、万葉集の短歌があります。山道でご飯を食べている時によく思い出す和歌です。
7世紀に、皇位争いの中で謀反の嫌疑をかけられ弱冠19歳で絞首刑になった有間皇子が、連行される際に詠んだ歌です。
雨飾高原キャンプ場、ブナ平、笹平等、50~60分歩くと休憩ポイントがあるのでペースはつかみやすいですが、標高の割に登りの辛い山でした。ブナ平では、ブナの葉を透かすように差してくる日光がさわやかな印象でした。
雨飾山頂は双耳峰になっていて、南峰に三角点と標識があり、北峰には石祠があります。
山頂から笹平に戻って左に折れ、梶山新湯めざして急坂を一気におります。梶山新湯の雨飾山荘では、夕食のお伴に清酒「謙信」をいただきました。武田信玄との川中島の戦いの結果越後に押し戻された上杉謙信を偲びつつの一杯です。
入山二日目は林道を下りるだけの行程です。別所バス停まで歩き、糸魚川駅行のバスに乗って帰途につきました。
(2010年9月下旬登頂)(50座目)