もう一本 そこがスキーの やめどころ
ケガ未然防止のための教訓
スキーやスノーボードは、その楽しさゆえ、夕方になって疲れてきても「リフトをあと一本乗ったらやめよう」という心理が繰り返し働き、安全サイドでの「やめどころ」をオーバーしがちです。しかし、知らず知らず蓄積した疲労は思わぬ事故やケガのもとです。
タイトルは全日本スキー連盟(SAJ)の安全十則の中の一つ「もう一回 そこがスキーの やめどころ」を少々アレンジしたものです。
リフト一日券を買った場合等、一本でも多く乗りたいという心理になりやすいため、このような側面も考慮してみました。
スキーやスノーボード等のスノースポーツは、クロスカントリースキー等を別として、重力を利用するスポーツなので特別な体力を必要とせず、運動習慣のない人でも楽しむことができます。
一方、かなりのスビードを出すことも可能なため、ケガにつながるリスクも少なくありません。
スピードコントロールをしながら滑っているつもりでも、雪質の変化により意図せぬスピードが出てしまったり、疲労蓄積により制動が効きにくくなることもあります。
「もう一本滑ったらやめようと思った時が、事故やケガの未然防止の観点からのやめ時」だというこの教訓は、大変重要な教えと感じます。
ケーススタディ
もう一本滑ったら今日は終わりにしようと思いつつ滑った最後の一本でケガをした事例を挙げてみます。
Aさんは、スノーバイク(ハンドルを切って進行方向を調整する自転車形の滑走道具)を楽しんでいて、「もう一本でやめよう」と思ってリフトに乗った後、その日最後の滑走で転倒。ハンドルに胸を強打し肋骨を骨折しました。折れた骨が肺を圧迫したため、肺機能が低下して呼吸が苦しくなり、病院に緊急搬送されて入院し、酸素吸入処置を受けるに至りました。
Bさんは、不整地(コブ)の練習にハマり、「リフトもう一本」を続けているうち転倒して「膝前十字靭帯(ACL)」を損傷しました。膝前十字靭帯損傷の場合、自分の他の部位の腱を移植する再建手術が必要となり、手術後のリハビリも長期にわたります。
不整地の場合、整地斜面に比べ、コブの谷部分が早めに陽が当たらなくなり、凍ってガリガリになりリスクが増します。整地を滑る場合より更に早めの「やめ時」を自ら設定することが大事です。
上記の例はいずれも、「もう一本という気持ちを抑えることができれば」と悔やまれる事例です。
[参考] SAJ安全十則
1.準備運動は忘れずに
2.無理なスピード事故のもと
3.自信過剰はケガのもと
4.睡眠不足はケガのもと
5.止まるな休むなコースの中で
6.割り込みや無理な追い越しはやめましょう
7.安全締具も調節次第
8.服装整え安全第一
9.もう一回そこがスキーのやめどころ
10.事故なら無理をしない