北海道の山特有の装備
エキノコックス 生水の危険性
北海道での登山にあたっては、生水をそのまま飲まないよう注意することが重要です。キタキツネが排泄するエキノコックス虫卵を経口摂取すると、エキノコックス症に感染するためです。
エキノコックス症は、1999年4月に全数把握の感染症に指定されたため感染者数が把握されています。国立感染症研究所によると、2018年末までの約20年間で425名の感染が報告されているので、年平均感染者は20名程度です。おそよ9割が北海道で報告されています。
潜伏期が5年から20年と長いのが特徴で、ヒトの主として肝臓に寄生し、肝臓腫大・腹痛・黄疸等の症状が出て、放置すると死に至る怖い病気です。
年間数名程度が死亡しています。
病巣の外科的完全切除が唯一の治療法です。
エキノコックス感染を防ぐためには生水を避けることが一番ですが、宿泊登山となるとそうもいきません。そこで考えられる対策として、以下の二点を挙げることができます。
①十分な時間煮沸してから飲む
②浄水器を通した水を使う
煮沸は、宿泊地に着いてからなら時間をとることが可能でも、行動中は難しいと感じます。
そこで浄水器が現実的な対策になります。ポイントは大きさ0.03mmとされる虫卵をシャットアウトできるフィルターを備えた製品を使用することです。
SAWYER社・MSR社・Grayl社等から販売されています。
各社の製品は下記画像から遷移するYAHOO!ショッピング公式HPで検索することができます。
エキノコックス症について理解を深めたい方には、北海道立衛生研究所HPが解りやすく参考になります。
ヒグマ対策
本州以南の登山でも熊対策は必要ですが、北海道に棲息するヒグマはツキノワグマに比べて大型で獰猛なため脅威です。
北海道の山を登る際は、熊対策用の唐辛子スプレーを極力持参します。すぐ取り出せることが重要なので、腰ベルトに装着できるホルダー付のものを購入しました。
フェリーや鉄道等で北海道入りする場合は道中携行可能でも、航空機に持ち込むことはできません。
実戦で使用した経験がないので効果について語る資格はありませんが、自分が風上にいるケース以外で効果的に使用できるのか疑問です(自分が風下にいる場合は自らを攻撃してしまう可能性があります)。わずか10秒に満たない噴射時間で熊の顔に命中させることは、ぶっつけ本番では難易度が高い気がします。
熊対策の基本は、鈴等音の出る物を利用して、人間の存在を相手に知らせることです。熊は基本的に憶病な動物なので、先方から遠ざかっていくといわれます。
人を恐れない個体が発生することを避けるため、人間の食料の味を熊が覚えないよう注意することも重要です。調理時に臭いの発生を極力抑え残飯を放置しないよう求められているほか、ザックを登山路に置いて山頂ピストンする等、熊がザック内の食料を漁る機会を与えることはNGとされています。
羅臼岳の羅臼平幕営地のように鋼鉄製フードロッカーのある幕営地では、食料全部をその中に収容するよう注意書きが掲示されていますが、他の山への普及はまだのようです。
熊に至近距離で遭遇した際の対処法として一般的に言われているのは、以下の点です。
①背を向けて逃げない(クマは逃げる物を追う習性があるため)
②目をそらさずにゆっくりと後ずさりする
③死んだふりをするのは効果がない(クマは死んだ動物も食べるため)
ただし、クマの出方によっては、地面に伏せてリュックで背中を守り、手で首を守ることが有効な場合もあるようです。
幌尻岳登山にあたっての特有装備
日本百名山の中で最難関とされる幌尻岳に平取町側から入山する際は、渡渉のための装備が必要となります。
具体的なアイテムは下記のとおりです。
①渡渉用の靴
靴底にフェルトが貼ってあり、渡渉の際にゴム底靴よりも滑りにくいブーツです。通常の登山靴にプラスして持ち歩くので、ザックの容量も靴の収納スペースを考慮する必要があります。渡渉の間この靴を履いて「すり足」で歩くとよいとのことです。
②渡渉用ソックス
ウェットスーツの素材で作られたもので冷えを軽減するためのものです。
③渡渉用スパッツ
ウェットスーツの素材で作られたもので、膝下まで覆って脚の冷えを軽減するためのものです。ふくらはぎをつりやすい人には必須装備です。
初夏の頃までは、雪解け水なので、水温が特に低い傾向にあります。
渡渉区間を無事終えても、その先幌尻山荘から山頂の間で、冷えた脚がつってギブアップする事例も生じています。
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