日本三大毒草 トリカブト

 春になって、毒草のトリカブトをお浸しにして食べた人が中毒を起こしたとのニュースが入ってきました。トリカブトは、ドクゼリ、ドクウツギとともに日本三大毒草(日本三大有毒植物)に位置付けられています。

トリカブト
猛毒のトリカブト(南アルプス)

 トリカブトは、以下の点から最も警戒すべき有毒植物の一つです。
①食用植物(ニリンソウ・モミジガサ・ヨモギ等)と似ているため、誤食事故が多く発生している。
②猛毒のアコニチンを含むので、わずかの量の摂取で死に至る可能性がある。
③広く分布して群落をなしており、登山や観光等で接する機会が多い。
 夏から秋にかけては花をつけるためトリカブトと認識しやすくなりますが、春の山菜採りシーズンは特に食用植物と間違えやすい時期ですので、注意が必要です。

 日本三大毒草以外でも、スイセンの葉をニラと間違え、炒めて食べ中毒を起こしたとのニュースがテレビ放映されました。行者ニンニクと似たコルチカム(イヌサフラン)、ふきのとうに似た福寿草等も誤食による中毒事故が発生しています。

 農林水産省HPには、「野菜・山菜とそれに似た有毒植物」のページが設けられており、見分け方に関するリーフレットをダウンロードできるようにしていますが、専門家でない限り、見分けてまで食べようとしない方が賢明と思います。
 知人が採った物を貰い、食用と信じて食べ中毒に至った事例もあります。

 トリカブトには、アコニチンという即効性の猛毒があり、これを用いた生命保険金目的の殺害事件が過去に何回も起こっています。1980年代に沖縄県で、1990年代に埼玉県で起きた事件は、いずれも複数人を殺害した連続殺人事件です。

沖縄トリカブト保険金殺人事件

 3人目となる妻に2億円近い保険金をかけたうえで、1986年5月に沖縄・石垣島で毒殺した事件です。夫はトリカブト毒の即効性を抑える効果のあるフグ毒を混ぜてアリバイ工作をするなど、その手口は毒の専門医も驚くほど巧妙です。
 1人目と2人目の妻も不審死を遂げていますが、立件には至りませんでした。

本庄トリカブト保険金殺人事件

 高山植物店でトリカブトを大量購入し、その毒をあんパンに混入して殺害し、遺体を川に流して溺死を装った事件です(1995年)。トリカブト毒の使用を繰り返すと足がつくことを怖れ、2人目の被害者に対しては、酒と風邪薬を大量に飲ませて殺害する手法に切り替えています(1999年)。
 自らは保険金受取人にならず、偽装結婚を利用する等、巧妙な手口を用いています。