鳥海山

一日で登って降りるには余りに大きな山

 山中泊を避けて一日で登って降りたのですが、鳥海山はあまりに大きすぎました。
 疲労は事故の素であるため、山中で一泊するべきでした。
 前日は湯ノ台温泉の国民宿舎鳥海山荘に宿泊。
 登山当日は、前日予約しておいたタクシーで早朝出発し、滝ノ小屋下の林道終点から歩き始めました。15分程度で滝ノ小屋を過ぎ、眼下に雲海を望みながらお花畑で有名な八丁坂を登り、河原宿小屋に到着です。

 ここから外輪山の一角である伏拝岳へは、途中急登もある長い登りでした。本日一番の我慢どころです。伏拝岳に上がってから、まず一等三角点のある七高山へ。
 山頂部では、最高峰の新山山頂に往復したり大物忌神社に行ったりして、2時間以上も長居をしてしまいました。単一の頂上ではないため、時間の余裕を見ておくのが、充実した登山につながると思います。
 新山山頂から見おろす日本海の海岸線の眺めは、登りの苦労を吹き飛ばしてくれました。この天気なら、山頂付近に泊まれば、翌朝影鳥海を見ることができたかもしれません。

 山頂を後に下山開始。七五三掛(しめかけ)という珍しい地名を過ぎ、鳥海湖(鳥ノ海)に降ります。ここから池越しに仰ぎ見る鳥海山は秀麗な山容でした。

鳥の海から鳥海山
鳥海湖から鳥海山を振り返る

 更に西方に向かい吹浦口コースに入ります。途中に見晴台という視界の開けた場所があり、今日の宿である国民宿舎大平山荘が眼下に見えました。最後の力をふり絞って体にムチを入れましたが、宿のエントランスに上がる階段のしんどかったことを今でも覚えています。

鳥海山と白神山地

 下山後泊まった鳥海山麓一帯は、昔は一面ブナの森に覆われていたとのことです。それが第二次世界大戦後の木材・パルプ需要を満たすために伐採され、人工林になってしまいました。

 一方、鳥海山の北方に位置する白神山地は、世界最大級のブナ森が多種多様な動植物の生態系を保っているとして、1993年に世界自然遺産として登録されました。

 鳥海山麓と白神山地の運命を分けたのは交通の便だったと思われます。鳥海山麓は奥羽本線という東北地方の大動脈の沿線だったため、運搬の便が良く伐採されてしまいました。対照的に、白神山地は五能線というローカル線沿いの不便な地であったため、伐採を免れたようです。

 レバタラ議論になってしまいますが、もし鳥海山にブナの広大な森が残されていたなら、白神山地とともに世界自然遺産に登録されたかもしれないというのが、私の勝手な思いです。
 地元の方々が広く日本全国を巻き込んでブナの森の復元運動を展開されていますが、一度失った物を取り返すのは大変なことです。

(2008年8月登頂)(42座目)

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